案件タイプ
住信SBIネット銀行は預金、決済、住宅ローンに加え、他社へ銀行機能を提供するBaaSを展開する。NTTドコモは約1億のポイント会員、約9,000万の通信契約、約1,800万のカード会員と店舗網を持つが、銀行口座をグループ内に持たなかった。日常決済から資産・融資まで顧客接点をつなぐことが取引の戦略的背景である。
本件は単純な全株取得ではない。三井住友信託銀行とSBIホールディングスが各34.19%を応募せず、一般株主をTOBと株式併合で整理した後、銀行がSBI株を自己取得し、ドコモが資本を入れる。議決権50対50でもドコモが支配力基準で連結する計画であり、議決権比率、経済持分、会計上の支配を分けて理解する必要がある。
読みどころ
個人向けの価値源泉は顧客獲得費と継続利用である。通信、dカード、銀行を同じ会員へ提案し、口座振替を内部化できれば外部費用を減らし、解約を抑えられる。店舗で住宅ローン相談を受け、データとAIで審査・提案を改善する余地もある。ただし囲い込みだけでは顧客価値を損なうため、金利、手数料、審査品質、選択の自由が競争力を左右する。
法人向けではTHEMIXとBaaSをNTTの法人顧客へ提供し、通信・データ・銀行を組み合わせられる。三井住友信託の信託商品とSBIの証券連携を残す方針は、既存顧客の離反を抑えるため重要である。一方、三陣営のシステム、ブランド、顧客データを接続するほど統制は複雑になる。口座増加だけでなく預金調達費、融資利ざや、BaaS収益、障害、顧客離反で成果を測るべきだ。
4,900円は直前終値を49.16%、1〜6か月平均を約26〜41%上回り、二つの市場株価レンジと類似会社上限4,393円を超える。DDM4,398〜5,871円では下半分に位置し、銀行の将来利益を強く見積もる場合の上値は残る。初回4,300円から600円、約14%の引上げは具体的な交渉成果であり、確定現金価格と将来の金融統合価値を交換する条件だった。
一般株主は4,900円で高い市場プレミアムを確定できる一方、ドコモの顧客基盤による口座・融資成長を将来受け取れない。二大株主の計68.38%が応募せず、株式併合を進められる議決権基盤が既にあったため、対抗買収や上場継続の余地は小さい。SBIホールディングスの自己取得価格3,614.84円と一般株主の4,900円は異なる手続に属し、同一条件として比較できない。